必要不可欠な色。

十年以上も前に購入した、一枚のTシャツがある。

色の展開は黒・赤・白の三色だったと記憶しているが、当時の私はどういう訳か赤を選んでいる。

一緒に購入した仲間が黒を選んだせいでもあるが、たまには違った色を購入してもいいかも…と軽く考えたからだ。

間違いだった。

今でこそ平気で赤を着るが、あの頃の私にとっては赤は敷居の高い色。

子供の頃から似合わないと言われていたこともあり、自らの意思で手に取ることは殆ど無かった。

その代わり、若い頃に好んで来たのは濃いグレーと黒。

無彩色が好きだったと言いたい所だが、無意識のうちに白を避けていたらしい。(事実、似合わない)

シルバーグレーもあまり好きではなく、とにかく黒っぽい服装を好んで着ていた。

そうすることで辛うじて精神のバランスを保っていただろうと思うと、少しだけ切なくなる。

尤も、その後の色遍歴を思えば、あれはあれで良かったのだとも。

話はそれたが、十年前の私にとって赤は苦手な色であり、問題のTシャツに袖を通すこと自体勇気のいること。

当時の私に似合っていたかどうかは覚えていない。

一人ぐらい「良く似合うよ」と言ってくれた気もするのだが、その言葉を素直に受け入れられる状態ではなかったからだ。

月日は流れ、そのTシャツを購入したことすら忘れかけていたある日。

たまたま応募した懸賞で、やはり赤のTシャツが当たってしまった。

予め気に入ったデザインを選んだつもりだが、届いた当初はやはり戸惑った。

赤が持つパワーそのものに圧倒されたこともあるが、この時もまだ、赤を着る勇気が持てなかったのだ。

とはいえ、デザインそのものは嫌いじゃないので、恐る恐る袖を通す。

悪くはない…とは思ったものの、やはり好んで着ることは出来なかった。

既に自身のパーソナルカラーを把握していて、似合わない赤がないことぐらい理解していた筈なのだが。

そんな私の意識が変わり始めたのはここ数年のことだと思う。

カラフルな色そのものは子供の頃から好きだったが、どういうわけか自分には似合わないと思い込んでしまい、長い間そうした思いを封印していたようだ。

まるで失われた時間を取り戻すかのように、私のワードローブには色が溢れはじめる。

オレンジが新鮮ならオレンジを取り入れ、黄緑色が恋しくなれば黄緑色を身に着ける。

パープルばかりを着ていた時期もあれば、あれほど苦手だった黄色を着ている自分がいる。

そして、赤。

十年以上も前に購入したTシャツも、たまたま応募した懸賞で入手したTシャツも、今の私にとってはお気に入りの一枚。

しかもスプリング向けの赤に近い発色なので、実際に着用しても違和感がない。

もっと早い段階で気付いていれば…と内心思ったものの、気持ちが伴わなければ似合う色も似合わない。

その時々で欲する色を身に着けることが大切なのだ、と改めて自身に言い聞かせてみる。

それにしても、この夏は赤を積極的に着ていた。

私にしては珍しく、行動的でありたかったのか。

はたまた何か主張したいことでもあったのだろうか。

何れにせよ、今の私にとっての赤は必要不可欠の色。

今度は何処に取り入れようか…と密かに企んでいる。